Tanren塾塾長体芯力®︎マスタートレーナー鈴木亮司です。
「頭でわかっているけど、できない」
「思った通り身体が動いてくれない」
イメージではわかるけど実際の動作では実践できない。
スポーツの現場においてとてもよくあることです。
運動能力そのものがイメージしている動きのレベルに到達していなければ当たり前のことなのですが、超一流のトップアスリートですら、こう言ったことが起きています。
それはなぜなのか?
運動能力自体が低い?
イメージする能力が低い?
それだけではないはずです。
これらの1つの答えを書いた文章があります。
アスリートの科学〜身体に秘められた能力〜小田伸午著より以下抜粋
*********************
スポーツ科学と運動実践
スポーツは「頭」で検討して、「感じ」で実践する。スポーツ科学者がスポーツ動作を研究するときには、選手の動作を外から観察して、種々の分析を経て、言語や数値で表現します。
しかし、スポーツ選手が実際に運動を行うときには、自分のなかの感覚を用います。言語や数値で表し得る客観的分析を基にした動作記述がスポーツ科学の世界です。
一方、自己の感覚、感性、イメージなどによって主観的に運動を実践するのが、スポーツ競技の世界です。
例えば陸上競技のスプリント(短距離走)の場合、スポーツ科学研究者は、走者の脚の後方スイングに目をつけ、世界の一流スプリンターは、脚の後方スイング速度が速いほど、疾走速度が速いと結論しました。
しかし、後方スイング 速度という客観的分析結果をそのまま走るときの客観的イメージに持ち込み、後方に脚を引き戻す動作感覚(例えば、後方にひっかく感覚)で走ると、走スピードは上がらないのです。
客観的に理解したことを、そのまま動作感覚に直訳してしまうとうまくいかない。このようなことが多々あります。
客観的世界と主観的世界の2つは、互いに異なる別々の世界を成しています。
2つの世界は別々の世界ですから、一方から他方へ越境するときには、翻訳が必要となります。
2つの世界のずれを認識し、2つの世界の対応を考え、互いをどう結ぶのか。
*********************
ここから先は実際の動作と感覚の世界を結びつけるものが必要になります。
「脚を後方にスイングする」という動作は結果として起きているわけです。
考え方として一つの例ですが
「身体が脚を素早く追い越している」
とも捉えられますね。
「脚を前に出す感覚」
「前足に体重を乗せ切る」
というような意識で動作を行うと結果として脚を後方に素早くスイングすることが結果として起きる場合があります。
このように研究結果として起きている事象を意識的に起こそうとして、直接的にその部分に意識を向けてしまうと結果が悪くなる、ということもありえます。
動作というものの多くは無意識によって支配されています。
その無意識を意識的にしようとするととてもぎこちなくなることもありますよね。
例えば歩くときに
「右足を出して、左手を後ろに振って…」
などと意識すると歩きにくくて仕方ないですよね。
動作をスムーズにできるようになる為に、どのような言葉をかけるべきか、事前にどのような運動を行うべきなのか、ここは導く者にとって1番の”見せ場”です。
実践者にとっても最も重要なところです。
理屈を覚えただけでは実際の動作に落とし込めるかどうかの瀬戸際です。
この部分を徹底的に深堀りすることが、技術や知識を覚えるのと同じくらい大切なことだと感じています。