リラックスさせることが力を発揮させる!

Tanren塾塾長 体芯力®︎マスタートレーナー鈴木亮司です。

 

小林寛道先生著者の

「ランニングパフォーマンスを高めるスポーツ動作の創造

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以前の記事で筋肉の伸び縮みで力を発揮すると思われていたが、超音波の検査によって、パワーは腱の弾性エネルギーによる働きがあったという研究結果があったことを書きました。

https://ryojisuzuki.jp筋肉と腱の働きについて/

に今回はその続きで筋肉と腱、運動のパフォーマンス向上についてのトレーニングに関して興味深い文章がありましたので、抜粋して紹介いたします。

 

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スポーツや身体運動の成績を左右する要素として反動動作の利用ということがある。反動動作は「筋の伸長、短縮サイクル(ストレッチ・ショートニングサイクル)」を利用したものであり、筋の伸長性収縮に続く短縮性収縮が高い機械的パワーを生み出すと考えられてきた。このことから、反動動作を用いた筋力トレーニングなどが行われている。

 

例えば、台から静かに飛び降り、着地とともに瞬間的に勢いよく飛び上がる方法によるプライオメトリックスは、着地の瞬間に大腿四頭筋や腓腹筋が引き延ばされるというストレッチ効果を利用したものである。

目次

しかし、こうした動作を用いたトレーニングを考える場合には、筋ばかりでなく腱の伸縮特性を含めたかたちで、「筋腱複合体の伸長、収縮サイクル」としてとらえることが重要である。

反動動作が効率的に高いパワーを発揮することには、腱組織の持つ弾性要素が深くかかわっているからである。腱組織の弾性特性は、筋繊維の収縮速度に大きく影響され、強い筋収縮が行われると腱の弾性も大きくなる。

「筋腱複合体の伸長、短縮サイクル」を利用する場合には、反動動作に向かうとき、あらかじめ筋の緊張状態がどの程度であるかよって腱組織の働き方も異なってくる。

中略

反動動作を用いた筋力トレーニングを行う場合にも「筋腱複合体の伸長、短縮サイクル」を利用する場合には、筋は反動動作開始直前にリラックスされていることが望ましい。ところが、このリラックスが案外難しい。身体を危険から護ろうとする心の働きが防衛反応として筋を緊張させてしまうからである。

トレーニングでは危険への心配がなく、安心して筋をリラックスさせ、しかも有効に筋腱が伸長された状態から短縮性収縮を生じ刺さる方法が工夫されるべきであろう。

中略

実際のスポーツ動作では、筋腱複合体の「ストレッチ・ショートニングサイクル」を利用した場面が随所に存在し、優れたパフォーマンスを獲得するためには、こうした場面を有効に活用することが極めて大切である。「本当に強い力はリラックスされた状態から生まれる」といわれるのも、強い筋収縮を起こす直前にどれだけ筋がリラックスされて引き伸ばされていたか、ということに関連する。

現在行われている多くの筋力トレーニングの方法では、脱力性の筋伸長(ストレッチ状態)に続く短縮性筋収縮が行われる状態を作ることは、意外に難しい

しかし、そのようなトレーニング方法を開発することによって、筋力の向上とともに筋をとりまく力発揮の環境(腱、骨、骨膜、靭帯、血管、神経など)を好転させることができるはずだと考えた。

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ここまで詳細に書かれた文章を見ることは決して多くはありません。

上手に動くには筋肉もそうですが、腱のことを考えるべきだと言うことです。

しかし腱を使うにも、まずはリラックスしないといけないということ。

身体に負荷をかけるにしてもリラックスして筋腱複合体を伸ばせる状態にしなければならない、ということです。

この本が書かれたのが2001年ですが一般的なトレーニングの多くは「○○に力を入れて」といった指導がなされていることから、形や表現が変わっても脱力というものは僕が知る限りではあまり無いようです。

このやり方だと筋の伸長を有効に使えないので、その形が出来るようになっていても場面が変わったときの動きの質、いわゆる根本的なパフォーマンス向上にはなり得ないのではないかと思います。

僕がかつて経験した「バーベルは倍くらい重さが挙がるようになったが、運動能力が急激に低下した」というのも、バーベルを挙げるトレーニングを繰り返すことによって身体に力が入る癖がついてしまい、脱力して筋を伸長させることが出来なくなったということが当てはまります。

現在某球団の監督をしている元プロ野球選手とNFLを目指していた選手が新聞の対談で

「トレーニング室で向上した筋力がグラウンドで発揮されないことに悩んでいる」

という文章がありました。

これもリラックスさせて筋を伸長させることが出来ていないというこも要因の1つではないかと思いました。

「力を抜くということは科学的にわかりますか?」と

小林寛道先生にお聞きしましたが

「脱力は学問にならないんだよね〜」

と仰っていました。

「科学的トレーニング」というものに「力を抜く」という概念はありません。

しかしこの「力を抜く」ということがいかに大切か、運動の現場にいると強く感じます。

この科学になり得ないことを追求することがとても重要だと感じています。

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